減価償却を織り込んだ会計上の利益の見方——数字の裏側を読む技術

不動産投資の損益は、一枚の表だけでは語れない。

前回の記事でキャッシュフローと税務上の利益が違う理由を説明した。今回はその続きとして、減価償却を織り込んだ上で「本当の利益」をどう読むかを掘り下げていく。

減価償却費を「足し戻す」という発想

税務上の利益(不動産所得)は、減価償却費を引いた後の数字だ。でも減価償却費は実際にお金が出ていかない費用だということは前回説明した通り。

だとすれば、税務上の赤字に減価償却費を足し戻すと、より実態に近い数字が見えてくる。

簡易キャッシュフロー = 税務上の利益 + 減価償却費

私の数字で見てみると

年度 税務上の利益 減価償却費 簡易CF
R3 ▲202万円 約182万円 ▲約20万円
R4 ▲432万円 約417万円 ▲約15万円
R5 ▲167万円 約416万円 +約249万円
R6 ▲93万円 約440万円 +約347万円
R7 ▲172万円 約259万円 +約87万円

税務上は毎年赤字でも、減価償却を足し戻すと実態はかなり違う年もある。R5・R6は物件が多かった時期で、家賃収入が多かった分、簡易CFもプラスに転じている。

ただしこれはローン元金返済を考慮していない

注意点がある。上記の「簡易CF」はローンの元金返済を差し引いていない。元金返済は毎月確実に出ていくお金だ。これを引かないと実際の手残りより大きく見えてしまう。

実質CF = 簡易CF - ローン元金返済額

3つの「利益」を使い分ける

不動産投資の数字を正確に把握するには、少なくとも3つの視点が必要だ。

① 税務上の利益(不動産所得)
確定申告に使う数字。減価償却費が引かれているため、実態より低く出やすい。節税効果の計算に使う。

② 簡易CF(税務上の利益+減価償却)
お金の動きに近い数字。減価償却という「見えない費用」を除いた実態に近い姿。

③ 実質CF(簡易CF-ローン元金返済)
最も実態に近い手残りの数字。これがプラスかどうかが投資判断の基本になる。

減価償却が終わった後をシミュレーションする

減価償却には期限がある。建物の耐用年数が過ぎると、この「見えない費用」が計上できなくなる。そうなると税務上の利益が一気に増え、税負担が重くなる。キャッシュフローは変わらないのに、税金だけが増えるという状況だ。

長期保有を考えるなら、減価償却が終わるタイミングを把握しておき、そこから先のキャッシュフローと税負担をあらかじめシミュレーションしておくことが重要だ。

まとめ——数字は一つじゃない、文脈で読む

不動産投資の損益は、ひとつの数字だけで語れない。税務上の赤字・簡易CF・実質CF、それぞれが異なる意味を持つ。

「税務上は赤字だから失敗」でも「家賃が入ってるから成功」でもなく、3つの視点を使い分けて実態を把握すること。これが会計知識を持つ投資家ならではの、数字の読み方だと思っている。

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